高低の違い 2020 5 3

書名 猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか
監修 河岡 義裕  今井 正樹  ミネルヴァ書房

 この本のタイトルには、「猛威をふるう」とありますが、
2018年2月28日に出版されたので、
新型コロナウイルスについては書いてありませんが、
ウイルスについて学びたいならば最適の入門書でしょう。
 さて、ウイルスについては、
よく「強毒」とか「弱毒」とか言われますが、
このような表現は、正しくありません。
 そもそも、ウイルスは、毒を産生しないからです。
ウイルスが人体に入って、複製を大量に作っていく過程で、
どこの過程でも毒を吐き出しているところはありません。
ウイルス自体にも毒性はありません。
 ただし、慣例として、この本によると、
強い病原性=高病原性=強毒、
弱い病原性=低病原性=弱毒という使い方がされるようです。
 ところで、この本の写真には、
高病原性の鳥インフルエンザウイルスに感染したニワトリは、
健康なニワトリに比べて、本来は赤く見えるトサカが、
皮下出血を起こして、どす黒く変色している写真があります。
 新型コロナウイルスに感染した人の足先が、
まるで「しもやけ」のように赤くなっている写真を見たことがありますが、
これは、ニワトリのトサカの事例と同じようなものか気になりました。
 人間とニワトリについては、「種の壁」を超えて感染するのかと思うでしょうが、
この本によると、「近年、問題視されているH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスは、
高病原性のウイルスであり、
このウイルスは、ヒトの呼吸器の奥深いところ(細気管支先端と肺)に、
鳥型レセプターが分布していたため、ヒトにも感染したのです」とあります。
 ちなみに、「H5N1」という奇妙な表現が気になる人もいるでしょう。
「H」とは、「ヘマグルチニン(HA)」のことであり、
「N」とは、「ノイラミニダーゼ(NA)」のことです。
「H」も「N」も、ウイルスの表面から出ている「つの」のようなものです。
 この本によると、A型インフルエンザウイルスには、
HAが18種(H1〜H18)、NAが11種(N1〜N11)の亜型が存在するそうです。
 HAがウイルスの侵入時に必要な「接着剤」ならば、
NAは宿主細胞からウイルスが離れる時に必要な「ハサミ」の役割です。
 ウイルスの仕組みや行動を見てみると、
まるで洗練された機械のように、合理的かつ機能的に完成されています。
 もちろん、ウイルスは「生物」か「非生物」か議論がありますが、
隙のない完成度の高さを見てしまうと、
マシーンのような「非生物」に思えてしまいます。
(正確には、代謝機構がないからウイルスは非生物と考えるべきか)











































































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